障害学会第11回大会(2014年度)

障害学会第11回大会(2014年度)発表要旨


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安原 荘一(やすはら そういち) 立命館大学院客員研究員

■報告題目

精神障害者社会復帰政策―「病棟転換型居住系施設」構想成立の現時点から振り返って

■報告キーワード

社会復帰 病棟転換型居住系施設、障害者政策決定

■報告要旨

 この問題に関しては『精神医療論争史―わが国における「社会復帰」論争批判』浅野弘毅2000という優れた先行研究がある。私たちはこの中に、社会復帰における「訓練至上主義」といった今日まで続く議論の系譜を見ていくことが出来る。様々な訓練のステップを病院内で踏んで社会復帰していくという本日まで続く発想である。

 さて、今回「病棟転換型居住系施設」問題で大変大きな議論になったのは、「退院意欲のない患者」といった、退院がうまくいかない原因を入院患者等に「帰責」する言説であった。そもそも2004年度に厚生労働省が発表した「社会的入院患者72000人の解消」がなぜうまくいかなかったのかに関して、今回の「検討会」では充分な具体的検証もなされてこなかった。

 地域住民の(グループホーム建設)反対運動や、本人の退院意欲のなさ、家族の引き取りやがらないと言ったことを原因としてあげられ、私立精神科病院サイドの消極性や国や行政の責任等を検証する作業をほとんどおこなわずに、いきなり「病棟転換型居住系施設」案が出てきたのである。各所で指摘されているように背後には私立精神病院の経営問題等が存在するのは明白であり、退院促進活動等に充分な予算をつけてこなかった国や行政の責任も問われることはほとんどなかったのである。

 本報告では、一つは今回の事態のおさらいの意味も含めて、今回の論点を今一度整理すると同時に、退院できない理由は「患者本人」にあるのではなく、国や行政の政策的過ち、病院側スタッフ側の消極的態度と言った「患者本人以外」にこそ本当に責任があるのだ!という点を、今一度、政策決定過程の問題やや歴史的経緯も踏まえながら整理してみることにしたい。

 なお、この問題は現在進行中の問題でもあり、多少報告要旨と異なった発表内容になリ得る可能性もあるがその点はご容赦頂きたい。

参考文献等
『精神医療論争史』 浅野弘毅 2000 批評社
ななせ たろうのブログ 「精神障がい者の解放をめざして…心病める人へのメッセージと討論の場」 http://blogs.yahoo.co.jp/taronanase
現代思想 5月号 『精神医療のリアル』 2014 青土社



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