■16 障害者制度改革の現状と展望 ──「障がい者制度改革推進会議」の議論を中心として── 有松玲(立命館大学) 1.目的 2009年12月障害者自立支援法(以下:自立支援法)を廃止し、2013年8月までに新しい障害者制度を創出するための「障がい者制度改革推進会議(以下:会議)」の設置が閣議決定され始まった。自立支援法の下で苦しんでいる障害者が大いに期待している重要な会議である。今日までに会議で16回、「総合福祉部会(以下:部会)」で4回論議がなされている。本学会の発表では推進会議の構成メンバーや内容を中心に、障がい者制度改革推進本部(以下:本部)、会議、部会の位置付けや論議を分析・紹介する。 2.方法 内閣府や厚生労働省のホームページより、必要な情報を習得し分析する。 3.分析結果 @本部、会議、部会の関係を明らかにする a.本部(本発表では簡単に触れるのみに留める):2009年12月8日閣議決定にて設置 ・目的:「障害者の権利に関する条約(仮称)の締結に必要な国内法の整備を始めとする我が国の障害者に係る制度の集中的な改革を行い、関係行政機関相互間の緊密な連携を確保しつつ、障害者施策の総合的かつ効果的な推進を図るため、内閣に障がい者制度改革推進本部(以下「本部」という。)を設置する。」(上記閣議決定より) ・構成メンバー:本部長 :内閣総理大臣 副本部長 :内閣官房長官 ,内閣府特命担当大臣(障害者施策) 本部員 :他のすべての国務大臣 b.会議(Aに詳しく記載) 上記閣議決定の4「本部長は、障害者施策の推進に関する事項について意見を求めるため、障害者、障害者の福祉に関する事業に従事する者及び学識経験者等の参集を求めることができる。」により会議を設置。 c.部会(本発表では簡単に触れるのみに留める):2010年4月12日会議決定にて設置 推進本部長決定(2009年12月15日)の第5項「会議は、必要に応じ、部会を開催することができる。部会の構成員は、別に指名する。」により部会を設置。 ・目的:「障害者に係る総合的な福祉法制の制定に向けた検討(障害者自立支援法をめぐる論点に関する検討を含む。)を効果的に行うため、障がい者制度改革推進会議総合福祉部会(以下「部会」という。)を開催する。」(2010年4月12日障害者制度改革推進会議決定第1項) ・構成メンバー 佐藤久夫(日本社会事業大学教授:部会長)など55名。尾上浩二など推進会議のメンバーも含まれる。 A推進会議 a:推進会議の目指すもの ・推進本部長決定(2009年12月15日) 「障害者施策の推進に関する事項について意見を求めるため、障がい者制度革推進会議を開催する。」 ・福島みずほ内閣府特命担当大臣の発言(2010年1月12日推進会議第1回) 「障害者権利条約の締結に向けた障害者基本法の抜本改正、障がい者総合福祉法(仮称)の制定、3点目が障害者差別禁止法の在り方などについても盛り込んでいただければと考えております。」 b:推進会議の構成メンバー 24人 ・表1(発表では全員について報告を行う) 氏名 所属 意見・所属の意見・著書 藤井 克徳 日本障害者フォーラム幹事会議長、日本障害者協会常務理事 「この20年余りを振り返ってっみて、障害者政策にとって最も逆風が強いのはこの時期だと思う。曲りなりにも発展を続けてきたこの国の障害者政策であったが、障害者自立支援法は「政策思想」の面で完全に逆方向を向いてしまったのである。」 大久保 常明 (福)全日本手をつなぐ育成会常務理事 「障害者自立支援法は、障害の有無や種類に関わらず全ての人たちと共に支え合う共生社会の実現を目指していますが、様々な問題や課題を抱えながら3年目を迎え、見直しの時期を迎えています。」 長瀬 修 東京大学大学院特任准教授 共訳(2004)「障害者の権利条約」、共著(2008)「障害者権利条約と日本―概要と展望」 c:これまでの主な論点 ・障害者基本法について(第2回)、障害者自立支援法、総合福祉法(仮称)について・障害者雇用について(第3回)、雇用について・差別禁止法について・虐待防止法について(第4回)、教育について・政治参加について・障害の表記について(第5回)、司法手続きについて・障害児支援について・医療について(第6回)、交通アクセス、建物の利用について・情報へのアクセスについて・所得保障について・障害者施策の予算確保に向けた課題について(第7回)、団体ヒアリング(第8回)、省庁ヒアリング(法務省,文部科学省,教育関係団体,総務省)(第9回)、省庁ヒアリング(厚生労働省,総務省,国土交通省)・「障害」の表記(第10回)、省庁ヒアリング(外務省)・今後の取り組みについて(内閣府)(第11回)、第一次意見取りまとめに向けた推進会議の問題意識の確認(第12回)、意見交換(内閣府地域主権戦略室)・第一次意見の取りまとめについて(第13回)、第一次意見の取りまとめについてについて(第14回)、第一次意見に関する結果報告について・今後検討すべき課題とスケジュールについて(第15回)、有識者ヒアリング(司法へのアクセス、虐待防止について、児童の権利に関する条約に基づき日本から提出された報告の審査について)・障害のある女性について(第16回)。