■15 アクセシブルなハンズ・オン ──博物館における体験型展示と障害を持つ来場者── 真下弥生 近年の博物館・美術館では、来場者が展示品に自らの手で触れる、展示している機材を操作する等、体験型展示や教育プログラム(ハンズ・オン)が盛んに行われている。実際に体を動かし、五感を駆使することによって、学習や理解を深めることを狙いとしており、心身に障害を持つ子どもや大人にとっても、それぞれのスタイルと関心に合わせた学習を可能にする契機がある。しかしながら、ハンズ・オンであること即ち、障害者にとってアクセシブルであることは意味しない。障害による知覚の特性を把握しつつ、多様な認識や学習のスタイルを許容する展示計画に基づく実現化が不可欠である。 本発表は、アクセシビリティとハンズ・オンの両立に、十全もしくはある程度成功している国内外の実践例を対象に、どのような要素が両者の実現に寄与しているかを分析する。これらの実践の中には、計画当初から障害者が利用することを想定して作られた展示もあれば、障害者の利用を特別に想定してはいなかったものの、展示品を柔軟に利用することを可能にするデザインとなっていたため、完成した展示が、視覚障害や知的障害を持つ子どもたちにとってもアピールするものとなっていた例もある。これらの例を比較しながら、物質性を伴うモノを教育・研究活動の中核に据える施設である、博物館・美術館における学習のアクセシビリティを考察する。 また、今年度も昨年度の発表に続き、ポスターと併せて、来場者が実際に手に取ることが出来るよう、今回の発表の内容に合わせたハンズ・オン展示品や教材も併せて展示する。多角的なアプローチによるポスター発表のあり方について、継続した評価・批評を得る機会とすることも、今回の発表の目的である。